【漢方通信12月号】冬に多くなる夜間尿(夜間頻尿)/八味地黄丸
暖冬と予想された時期もありましたが、今年は寒さ厳しい師走になりそうです。
冬になるとテレビCMが流れる漢方薬があります、それは八味地黄丸(はちみじおうがん)。「夜間尿に良い漢方薬」と説明され、「夜間尿の専門薬」のイメージで捉えられます。
夜間尿とは、『明けがた(3~5時頃)、おしっこ(小便)がしたくなり、目が覚めてしまう』という不調です。一度目覚めるとその後寝つけず、体調もすっきりしない状況が続きます。そんなとき、八味地黄丸が不調改善に良いものです。食間に(空腹時、たとえば10時・16時・20時)、お湯で服用してください(40℃程、お風呂の温度)。改善の兆しは、服用後3日程で現れるでしょう。状況を見ながら、春まで服用し続けると良いでしょう。
夜間尿は、2つの要素から現れます。ひとつは「冷え」、そのため夏はほとんど発症しません。もうひとつは「衰え・極端な体力消耗」、そのため高齢者に多く現れます。治療に用いられる八味地黄丸の薬効は、「身体の芯から強く温める(配合生薬のブシ・ケイヒ)」「身体に潤いと滋養を届ける(配合生薬のジオウ)」の2点を強く現わすものです。服用するとやや胃が重くなったように感じるかたもありますが、食後服用や、服用回数の調整などで、身体により良く働くようにしてください。服薬中は、身体を温める生活習慣を心がけてください。「毎日の入浴(シャワーでなく)・冷飲食物を避ける・温かい服装を心がける」や、体循環促進に役立つ漢方的な生活習慣「早寝早起き・目を酷使しない・散歩を習慣にする」も大切です。
八味地黄丸は、夜間尿の専門薬ではありません。身体の冷えを強く感じ、「腰から下に力が入らない」「寒さを感じるとすぐにおしっこをしたくなる」などの不調に用いる、冬の機能低下防止薬と言えます。
漢方の治療においては、当初の見立てが重要です。
慢性疲労のかたや、いかにも元気がないかたに、夜間尿の不調があるとはいえ八味地黄丸を選択すると、「胃もたれして服用出来ない」の訴えにつながってしまいます。そうならぬよう、真武湯(しんぶとう)など他の温暖薬を選択します。ブシを配合し、ジオウを多く配合しない処方群です。
気虚・陽虚向きの対応薬をしっかり選ぶということで、ニンジン(高麗人参)を併用するのも良いことです。なお、テレビCMでは「八味地黄丸は、夜間尿の唯一の治療薬」の説明がありますが、これは、厚生労働省が与えてくれた製品効能に、「夜間尿」と記されたものが他にないという法律的な説明です。八味地黄丸の同薬効と言える姉妹薬は(配合生薬が共通するもの)、幾つか存在します。
本年も一心堂薬局各店に足を運んでくださった皆様に、心より感謝申し上げます。真剣にカウンセリングさせてもらい、漢方の力を借り、皆様の病の苦しみが少しでも早く治癒するよう、今後も研鑽を続けます。知識を高めあうための社内研修会を、毎月行っております。やがて来る2024年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。
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