【漢方通信7月号】元気回復の方法と、下痢をすっきり止めの方法
夏は「元気がない」と感じやすい時期、それはどうしてなのでしょう。漢方視線では、長期にわたる発汗が、元気流出の原 因と捉えます。体液には気が溶け込み、体内を自在に巡ります(気のエネルギーを借りて、身体上部に上る)。それが、直射 日光や高気温により突然汗として体外に奪われるので、「体液(津液)」とともに、「元気(気)」が流出するのです。汗は体表 に流れることで体温を下げ、生命を守るという機能があるため、汗そのものを止めることは出来ません。 元気を取り戻す、2つの方法があります。まずは、消耗した気(元気)を補充する方法です。夏の元気薬とされるのが、漢 方薬・生脈散(しょうみゃくさん)です。発汗で失われる2要素、体液(津液)と元気(気)を、急ぎ補充します。体液(津 液)は生薬・バクモンドウ(麦門冬)が、元気(気)は生薬・ニンジン(人参)が補充します。汗をかいたらすぐに、対応薬 を飲むことが大切です。学業や業務の途中でも、山野を歩いているときでも、すぐに服用すれば、元気補充がスピーディーに 行われます(疲れを翌日に持ち越しません)。発汗の後、長時間経ってから服用しても、回復が遅れます。ひとはスマートホ ンなどと異なり、補気薬を飲んでも、すぐには元気100%にはなりません。1週間程は、継続服用を心がけてください。 元気がないとき、それも「食欲が著しく低下しているとき」には、他の薬を用います。漢方薬・ 香正気散(かっこうしょ うきさん)です。ニンジンは、配合されていません。エキス剤なら、40℃程のお湯で飲むと、消化器不調が早く改善するで しょう。夏の冷飲食物の過剰摂取で弱った胃をいたわり、食欲を湧かせ、食生活を正常化することでひとを元気にします。 夏は、「下痢」が起きやすい時期でもあります。これも、2つのパターンに大分されます。有名市販薬の下痢止め「百草丸」 「陀羅尼助丸」があります。これは、食べすぎ飲みすぎで起きる下痢に用いる、クールダウンの要素を強く持つ製剤です。同 様に用いることが出来る漢方薬は、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)です。このパターンの下痢には、特徴があります。お いしいものを食べすぎたときを、思い出してください、「トイレの後も、腸に便が残った感じ」「腹部で音がする(腸鳴下痢)」 「上腹部を手で押すと抵抗を感じる(膨満感)」などの不調です。服用すれば、早期に効果を示します。 もうひとつは、夏の暑さから冷飲食物を多く摂り、胃が冷えて機能低下した場合です。下痢の特徴は、「泥状便~水様便」 です。胃を温める薬で治療します。漢方薬・ 香正気散(かっこうしょうきさん)を、40~60℃程のお湯で服用するのが 良いでしょう。短時間で効果が現れます。2~3日の服用ではなく、10日程継続服用してください。夏のウイルス性胃腸炎 のあとも、クーラーの冷気がお腹にあたると便を漏らしてしまうような不調が続くとき、やはりこの薬が良いものです。1カ 月程、継続服用をしてください。逆の対応薬を用いると、下痢そのものは一時的に治まっても、お腹がスッキリする感覚は持 てません。
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