【漢方通信9月号】子宝相談/新しい命のために
赤ちゃんに来て欲しいのに、その願いが長年かなわない夫婦が増えています。不妊治療実績件数は、449,900件(2020年A RTデーター、日本産科婦人科学会)。医療機関で不妊治療を受けても、24歳頃~33歳頃の妊娠率は40%前後。妊娠したとし ても36歳での流産率は20%を超し、年を重ねるとその数字は急上昇します。43歳で無事出産出来るのが5%、44歳で3%に 下がります。こんなふうに、赤ちゃんを望むかたの心が沈んでしまう数値が示されます。「年を重ねると赤ちゃんを産むのが 難しいなんて、誰も教えてくれなかった…」と、悲しむかたがあるのです。 20 歳台後半から30歳後半、赤ちゃんを望むかたの子宝相談が増えます。新しい命を招くために精一杯診立て、ともに困難 を乗り越える気持ちで対応します。40歳を過ぎたかたからも、相談いただくことがあります。文頭に記した様に、出産に至る には困難な状況です。医療者側も、「新しい命に、不都合な身体の状態があったらどうする…」と躊躇しがちです。関連する誰 にとっても、一生抱えなくてはならない負の問題になります。しかし、相談者の意思が固く、最終的にご自身で多くのものを 背負う覚悟でいらっしゃる場合、わたしたちは懸命に手助けします。
子宝治療は、特別なことをするのではありません。女性の心身の状態から、不快さを消す対応をします。
月経遅延(無月経) なら生薬・トウキ(当帰)で治療、代表薬は四物湯(しもつとう)です。
月経痛・経血に血塊が混じるのなら生薬・トウニン (桃仁)で治療、配合薬は折衝飲(せっしょういん)や桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)です。
感情の波立ちが大きいな ら抗ストレス生薬・サイコ(柴胡)とシャクヤク(芍薬)で治療、配合薬は加味逍遙散(かみしょうようさん)です。
イライ ラが強く長く続くときは、四逆散(しぎゃくさん)を選びます。四逆散にも、抗ストレス生薬2種が配合されます。
不調を覚 えるうちは治療を続け、性交渉の際も避妊してください。
新しく訪れる命に、出来るだけ健康な心身をあげたいからです。
薬 だけで治療する訳ではありません、生活習慣も見直してください。
「早寝・早起き」「目を酷使しない」「身体を動かす(散歩)」 という暮らしを心掛けてください。それらは血液循環を改善し、新しい命がやって来るのを助けます。
男性側に原因があるこ とも、増えています。男性の疲れが著しい・加齢の状況(40歳以降)なら、鹿茸などを用いてください。身体が健康なら、良質な精子が生み出されます。
生活習慣と服薬で笑顔が戻ったとき、新しい命がやって来やすくなります。
芎調血飲第一加減(きゅうきちょうけついん だいいちかげん)という、薬効は強くありませんが、体循環を守る薬の服用を始めます。避妊を止め、あるがまま、なすがま まで、夫婦仲良くお過ごしください。慈しむ心を忘れずお過ごしください。
そして新たな命の芽生えが分かったとき(妊娠が 分かったとき)、 芎帰調血飲第一加減の服用を止めてください。活血薬が配合されるためです。しかし元気な赤ちゃんが生ま れたあと、この薬を思い出してください。産後15日後に不正出血が無ければ、1カ月間継続服用してください。消耗した女 性の身体を、もとに戻してくれます。
芎帰調血飲第一加減とは、本来「産後の女性の体調回復」のために用いられる薬です。 強く活血すると大量出血で命の危機となることもあり得るため、ソフトな薬効の体循環回復薬・維持薬です。漢方視線からお 話しすると、産後服用しても、母乳に悪影響を及ぼさないと捉えています(配合されるトウキやジオウが母の血分となり、そ れが母乳に変わる)。
妊娠中も漢方薬を用いたいかたには、当帰芍薬散をお薦めします。
医療資格者と相談し、妊娠初期から 用いてください。
いま生きるすべてのかたの人生が、良い方向へ導かれるよう、そして赤子の人生が希望に満ちたものになる よう、願って止みません。
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