【漢方通信10月号】耳鳴りの漢方対応

query_builder 2024/10/01
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耳鳴り

 耳鳴りは、国民の20%弱が感じているとされます(耳鳴症の有病率に関する研究1999年・厚生労働科学研究成果データ ーベース)。耳鳴りの訴えが多いのは男女35歳以降のかた、加齢による機能低下がその不調を起こしています。耳鳴りは、 「聞こえる音」をヒントに診断します。


患者の多い「セミの鳴き声様の耳鳴り(大音量ではない)」の場合、加齢による機能低 下が原因です。対応生薬はジオウ(地黄)、それを含む漢方薬・六味地黄丸(ろくみじおうがん)を用います。継続服用するこ とが大切で、徐々に不調改善します(2週間程で改善が感じられますが、1~3ヶ月継続服用するのが良いでしょう)。この タイプの耳鳴りは、「手で耳をふさぐと音が減弱」「夕刻から夜間に悪化」の状況になります。


耳鳴りは熱感不調が主なので、 治療当初は六味地黄丸に、クールダウン薬・黄連解毒湯(おうれんげどくとう)を併用するのも良いでしょう。漢方病名は陰 虚火旺(いんきょかおう)、夕刻から手足のほてりを感じやすくなります。


若い世代を含む「大音量の耳鳴り(金属音など)」の場合、ストレスが原因です。対応生薬は抗ストレスのサイコ(柴胡)と シャクヤク(芍薬)のペア、それを含む漢方薬・四逆散(しぎゃくさん)などを用います。短時間で改善に向かうでしょう。 このタイプの耳鳴りは、「手で耳をふさいでも音が減弱しない」「感情が高ぶると悪化」の状況になります。漢方病名はストレスによる気滞証候の肝気鬱血(かんきうっけつ)、イライラなど感情不調が現れます。 「セミ音の耳鳴り(大音量ではない)」は陰虚火旺、「大音量の耳鳴り」は肝気鬱結、異なる病であり、確かな違いがあるは ずです。音を手掛かりに、どう治療するかを選んでください。

しかし、「セミ音だが、音も大きい」という判断が難しい状況も あるでしょう。そんなときは、滋腎通耳湯を3~4日服用し状況がどう変化するのか観察するのが良いでしょう。服用するう ちに「セミ音(大音量ではない)」だけになれば六味地黄丸に薬を変え、「大音量」だけになれば四逆散に薬を換えます(黄連 解毒湯との併用が良い)。

滋腎通耳湯を、病の振り分け薬として用いる方法です。この薬は平成23年(2012年)4月15日に 厚生労働省の改正基準(追加27処方)に収載され、比較的最近製品化が認められた漢方薬です。耳鳴りや難聴に、使われる ことが増えました。


苓桂朮甘湯・当帰芍薬散・七物降下湯も、「耳鳴り」の製品効能を持ちます。耳鳴りは基本的に熱不調なので、寒性薬での対 応が求められます。前述3種は温性薬なので、軽い不調に用います。

苓桂朮甘湯は元気がない状況に(気虚で生じた湿邪)、当帰芍薬散と七物降下湯はまだ元気が感じられる状況に(血虚で生じた湿邪)、用いてください。



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